概要

本研究では、これまで分離が極めて困難とされてきた放射性水素同位体「トリチウム」に対し、当社が独自に開発したセパテク・マイクロバブルシステムを用いた分離実験を行いました。

実験では、トリチウムを含む模擬汚染水に対してマイクロバブル処理を施し、処理前後のトリチウム濃度を比較した結果、最大で約50%の濃度低減が確認されました。これは、マイクロバブル技術によってトリチウムを化学的・物理的に分離する可能性を示唆する重要な成果であり、将来的な放射性廃水処理技術の新たな選択肢となることが期待されます。

セパテクについてはこちら


目次
・トリチウムの危険性と課題
・分離実験の概要
・結果と今後の展望

トリチウムの危険性と課題

トリチウム(³H)は陽子1個と中性子2個からなる水素の放射性同位体であり、「三重水素」とも呼ばれています。
化学的性質は通常の水素とほぼ同じで、多くの場合「トリチウム水(HTO)」として水分子の形で存在します。そのため、従来の濾過や吸着などの手法では分離が極めて困難な核種として知られています。

トリチウムが放出する放射線(β線)はエネルギーが非常に低く、人体への透過力も弱いため、直ちに致命的な健康被害をもたらす物質ではありません。

しかしながら、 除去や分離が難しいという技術的課題に加え、原子力施設などで発生する処理水や廃液の管理において社会的な関心が高まっており、安全かつ持続的な分離技術の確立が求められています。2025年現在においても、トリチウムを完全に分離・除去する技術は確立されていません。

(参考:経済産業省 トリチウムって何?

分離実験の概要

当社が開発したセパテク・マイクロバブルシステムは、これまで放射性セシウムの除去や揮発性有機化合物(VOC)の除去などで実績を上げてきた技術です。 このシステムを用い、トリチウムを含む汚染水(原水)5Lを対象として30分間の処理を実施しました。

処理後に得られた浄化水は、公益財団法人日本分析センターにおいて、低バックグラウンド液体シンチレーションカウンタ(日立製作所LSC-LB5)によりトリチウム濃度を測定しました。

結果と今後の展望

分析の結果、処理後の浄化水では原水と比較して約40〜50 Bq/Lのトリチウム濃度低下が確認されました。これは原水中のトリチウム濃度を約40〜50%削減できたことを意味します。
分析結果は以下の通りです。

画像引用:セパテク・マイクロバブルが実現したトリチウムの浮上分離

この成果から、福島第一原子力発電所の貯留水に含まれるトリチウムについても、セパテク・マイクロバブルシステムを複数回処理に適用することで、日本の排出基準値(60,000 Bq/L)以下に低減できる可能性が示されました。 今後も当社では、より高効率かつ実用的なトリチウム分離技術の確立に向けて研究開発を継続してまいります。