概要
本事例は、バイオオーグメンテーションを応用した当社独自の技術「BioTech(バイオテク)」の可能性を示すものです。BioTechを用いた実用シーンの一つに、汚泥を完熟発酵させることで肥料に変える「堆肥化」があります。
今回の中国電力株式会社二級ダムでの実施により、当社の技術がダム底の汚泥を植物の生育に有用な一般的な肥料と同等のレベルまで変換できることが立証されました。
本記事では、堆肥化技術を用いてダム底に堆積した汚泥を、植物にとって安全で有効な肥料へと変換する過程について、施工方法検討実験から精製物の試料分析結果までの概要をご紹介いたします。
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目次
・施工対象概要
・施工方法決定までの流れ
・試料分析による施工結果
・おわりに
施工対象概要
汚染のメカニズム
ダムには枯葉や排水などの有機物が流入し続けます。本来は微生物がこれを分解しますが、許容量を超えて「自浄能力 < 腐敗力」のバランス崩壊が起きると、以下の問題が発生します。
- 水質悪化の連鎖: 嫌気性分解による悪臭ガスの発生や、栄養塩の放出によるアオコの異常発生。
- 酸素欠乏と汚泥堆積: 流れの緩やかなダム底層で分解が停滞し、汚泥が蓄積。
Bio Techによる解決
当社は「Bio Tech(バイオテク)」技術により、水質汚染の元凶である堆積汚泥を分解・処理。単に除去するだけでなく、安全で有効な「肥料」としてリサイクルすることに成功しました。
施工方法決定までの流れ
当社技術の利活用にあたっては、対象環境に最適な堆肥化プロセスを確立するため、複数回の実験を実施しました。 その概要は以下の通りです。
- 現地で採取した浚渫土を用い、有機物の分解特性を評価し、当該地点に適した有機物分解システムを設計。
- 分解試験の結果をもとに、最適な分解時間および薬剤添加量を選定し、実験的に検証。
- 分解処理の有効性を確認するため、こまつなの幼植物を用いた栽培試験によって評価。
試料分析による施工結果
二級ダムの底泥を堆肥化して得られた発酵物が、植物に害を及ぼすことなく、肥料として生育を促進する能力を有するかを確認するため、こまつな(ツケナ類)を用いた幼植物試験を実施しました。
本試験では、検証対象となる汚泥発酵物を「供試肥料」、比較対象として岩手県知事に届出済みのバーク肥料を「対照肥料」、そして肥料を含まない土壌を「無施肥区(無機基礎量)」として設定し、発芽および生育状況を比較しました。



その結果、発芽開始時期および発芽率において、供試肥料区と対照肥料区は同等の傾向を示しました。
また、供試肥料区では施用量の増加に伴い生育量が向上し、無施肥区と比較して同等以上、対照肥料区と比較しても同等の成績が得られました。
おわりに
上記の栽培試験の結果、供試肥料区が植物に対して安全であり、肥料として十分に利用可能であることが確認されました。
この成果は、当社技術によりダム底に堆積した有機性土砂を農業利用可能な土壌資源へと再生できることを示しています。
これにより、ダムの維持管理に伴う廃棄物を資源として再活用することが実現可能となり、今後の持続可能な環境整備や資源循環型社会の形成に貢献することが期待されます。
